私は遺品整理士のプロで、日々、ご遺族に代わり遺品整理をさせていただいております。
その業務内での経験や感じたことを通して「終活」、特に片付けは元気なうちに!と言い続けています。
今回は片付けの中の一つ、物の価値について発信させていただきます。
誰でも大切にしている「物」があると思います。
それは高価なものから安価な物まで人それぞれで、その人にしか分からない価値があります。
頑張った自分へのご褒美に購入した高級な「物」
交際や結婚記念日にパートナーからプレゼントされた「物」
子供がプレゼントしてくれた「物」
親から譲り受けた「物」
想い出が詰まった「物」など
自分にとっては大切な宝物が誰にでも一つや二つありますよね?
そして、その大切な「物」には必ずと言っていいほど、想い出もセットになっているはずです。
私は、20歳の誕生日に両親からプチダイヤのネックレスをプレゼントされました。(誕生石がダイヤです)
それまで誕生日やクリスマスにも、プレゼントはもちろんケーキさえ買って貰えませんでした。
理由は、「欲しい物があるなら、自分で働いて買え」です。
働かざるもの食うべからずは幼い頃から両親に叩き込まれていました。
我が家は厳しく、小学校1年生になった年から床の拭き掃除、
小学校高学年からトイレと洗面台の掃除は毎日の日課とし、
中学生になった年からお風呂掃除がプラスされました。
その労働の対価として、お小遣いではなく給料として毎月貰っていました。
今でいうブラック会社の低賃金でしたが…。
無情にも、誕生日ケーキが欲しいならその低賃金の中から買え!と…。
今なら労基に駆け込みます。
ネックレスはそんな両親からの最初で最後のプレゼントです!
大切にしないわけがありません!
ネックレスそのものは大した価値はありません。なにしろプチダイヤですから。
ですが私にとっては大切な大切な「物」です。
幼い頃からのお金と労働に対する教育・環境を語らなければ、
私がそのネックレスを身に着けていても「安っぽいネックレス」としか思われません。
ですが上記の想い出を聞いた人は、違った見方をし「大切な物」として認識してくれます。
持っている物の⼤部分は、その価値が⾃分にしか分かりません。
苦労して物を⼿に⼊れた経緯、⼿に⼊れるために払った代償、物にまつわる物語の記憶が、
物の実際の価値を⾼めます。
だから⾃分という記憶の持ち主を失った時、その物は価値を失ってしまうことになります。
日々の遺品整理業務の中で多くの方が「大事な物は持ち帰ったから残りは全て処分して」と
私達に依頼されます。
本当に?全てご処分してもいいのですか?
大事な物=高価な物だけではないのですよ?
私達ポータルハートサービスはスタッフ全員、遺品整理士の資格保有者です。
だからというわけではありませんが、遺品整理の業務内でカンが働きます。
この品は大切にされていたのだろうなというカンです。
無心にひたすら細かい物の分別をしている際、ピタッと手が止まる時があります。
カンが働いた瞬間です。そしてそのカンは高確率で正しいカンです。
そのような時に発見した品は、例え全て処分と言われていても一旦取り置きして、
後で確認していただきます。
カンによって取り置きした品は予想通り、家族から大切に扱われることが多いです。
ですがもしカンが働かなかったら…。大切な物は処分場行きです。
その危険性を回避するためには、大切な物とセットになっている想いを伝えておくことです。
なぜ大切にしているのか、自分にとってどんな価値があるのかをしっかり伝えてください。
娘に、両親からプレゼントされたネックレスを20歳になったら譲る約束をしました。
もちろん幼い頃からの環境も含めて全て話しました。
その後、もっと高価なネックレスを自分で購入した際に、
「形見としてどっちが欲しい?」と訪ねたところ、迷わず両親からプレゼントされたネックレスを選びました。
私の想いがちゃんと伝わっていると実感し非常に嬉しかったです。
大切な物の価値は自分しか分かりません。
大切な物と一緒に、自分の想いも大切にして欲しいのなら、元気な今のうちに伝えておきましょう。
投稿者:篠田